ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文(c)へ
グローバルナビゲーション(g)へ
サイドエリア(l)へ
サイトのご利用案内(i)へ
  1. トップ
  2. 行政情報
  3. 関係会議
  4. 新市場に関する会議
  5. 新市場基本コンセプト懇談会
  6. 第3回新市場基本コンセプト懇談会議事録〈要旨〉

第3回新市場基本コンセプト懇談会議事録〈要旨〉

午後4時00分~
会場:築地市場 東京都第4会議室

1.講演「川上の戦略と市場への期待、批判」

講師:廣吉勝治委員(北海道大学教授)<水産>

三輪宏子氏(流通ジャーナリスト)<青果>

川上の戦略と市場への期待、批判というテーマで、廣吉委員から「水産物の需給構造の現状と再編見通し」、三輪氏から「消費行動の変化に向けた中間流通業者のなすべきこと」について、それぞれ2部構成で講演がなされた。

Ⅰ 水産物の需給構造の現状と再編見通し<廣吉委員>

(1)水産物需給関係のボーダーレス化はなお推進される。

①本来的な水産物需給の国際性について
  • 水産物は漁場と市場(供給と需要)の地域特性という条件が偏在しており、かつ、製品マーケットが非常に国際性を持っていることから、競争条件に国境の制約が少ない産業である。つまり、ボーダーレス化、グローバル化が進んだ産業であると言え、それは、今後さらに横断化する傾向が進む。
②「200カイリ」新海洋秩序を契機とする供給構造変化
  • 1970年中ぐらいまでは、日本、旧ソ連(ロシア)が1,000万トン近い水揚げで安定してきたが、現在では100万トン以上水揚げをする漁業国が二十数カ国(筆頭は中国)に増え、日本のウエートが下がってきている。
  • 魚食の消費は世界的に上向き傾向にあるが、農産物のように供給過剰ではなく、供給過少状態であることから、自然資源の過剰漁獲が問題となっている。(農産物とは基本的な状況と問題性が異なっている)
③世界の水産物需給市場形成のキーステーションの一つは日本
  • 世界的なマーケットは550億ドル前後、そのうちの3割を日本が占めている。
  • 水産物の約4割は貿易対象品とされるが、日本人が好むマグロやエビ、サケ、マスに至って言えば、ほぼ7~8割が貿易対象であることから、日本がそのキーステーションになっている。
  • サケ、マスのように北欧の多国籍企業が供給するという構図が既に確立している商品もあり、全体として国際的な流通の流れの拡大方向は止まらないであろう。

(2)国内水産物消費の高度化、多様化は引き続き顕在化する

  • 水産物のマーケットは、農畜産物と比較して、加工・業務・飲食・外食の市場規模が拡大している。
    (農産物は約20%台)
  • 1963年ごろは、動物タンパクの中で魚は庶民の食べ物であったが、鶏肉、豚肉の単価が急激に低下してきて、1970年代の前半、中盤あたりで魚を下回り、牛肉の単価も最近では下げ傾向にある。
  • 生鮮魚介、塩干魚介は押しなべて購入単価を上げつつ消費も伸ばしてきた。価格が高くなったという分析ではなく、それでもなおかつ家計の十数%を維持しているということは、消費の中身が変化したのではないかというように考えざるを得ない。

(3)国内生産構造の変貌

  • 日本の漁業は、沿岸・近海・沿海養殖中心の漁業へシフトしてきており、もう、遠洋・大型漁業生産主導への再編は考えられない。
  • 漁業生産構造が大きく変わり、競争力をなくしたことにより、日本の漁業が衰退して、伝統芸能の域に達しかねないような産業に低下する可能性はある。それへの対応は、川下も考えざるを得ないだろう。
  • 今、佐賀関などでは、非常に付加価値の高いブランド性を持たせるような魚の供給体制への再編に努めている。そういう高い価値評価を受けるような努力を一生懸命川上ではやっている。

(4)「ツキジ」市場へのメッセージ

  • 漁業の生産物の需給関係の著しい国際性は否定できない。築地はまさに国際的な集散拠点という自覚を持ち、インターナショナルパブリックコメントを重視すべき。
  • セリとか入札、それが社会的信頼を得る市場あった時代から、安心・安全・健康や衛生管理、情報開示、公平な取引、食糧安保問題、あるいは生物資源の保全、生態系の保全等に消費者の関心が高まるという方向にあり、その意味からも「社会的信頼」の中身が変わってきたと言わざるを得ない。
  • 高品質、高鮮度である国内生産への支援、育成、あるいは資源管理型漁業の問題についても、消費市場として考えていくことが非常に大事。

Ⅱ 「消費行動の変化に向けた中間流通業者のなすべきこと」<三輪氏>

(1)青果消費の最近の傾向

  • アメリカで「ファイブ・ア・デー」という1日に5単位の青果、野菜、果物を取ろうというキャンペーンを10年ぐらい前から政府も一緒になってやったのが功を奏して、1999年までの約9年間で青果の家計内消費が約24%程度伸びている。
  • 一方、日本ではこれまでの約11年間に、丸の野菜に限っては16%程度落ちている。しかし、消費者に対して健康のために食べているものを挙げてくださいというアンケートをすると、第1位が緑黄色野菜、以下20位までに約18品目を野菜が占めている。
  • 確実に丸での野菜、果物というのは買わなくなっている。若い方に話を聞くと、既に果物でさえ、みかんの皮をむくのが嫌いである。ましてやりんごの皮をむく等問題外。そういう声が今、挙がってきている。

(2)デフレ傾向にある野菜の販売価格

  • 野菜全体の末端価格が落ちている。デフレ傾向を食い止める手だてというのは、小売業者も中間流通業者も今までやっていない。
  • 野菜の末端価格を下げざるを得ないということは、中間部分でのコストを切り下げざるを得ない。しかし、野菜の末端価格を構成している割合を見ると、生産コストで約25%、小売で25%から30%ぐらい取る。つまり、大部分が中間流通コストとなる。今の野菜の販売価格はデフレなのか、もしかしたら適正価格ではないかという見方もできる。

(2)食品スーパー利用者(30~40代女性中心)に見る近未来の食品購買スタイル

  • この年齢の女性というのは非常に情報量が豊富で、特に新たな発見や、情報刺激に期待していることから、売場は絶えず新しい情報を発信し続けていなくてはいけない。
  • よく売れている食品スーパーに行くと、売り場の見せ方、売り方、目玉の出し方が毎週変わっている。これをやらないとお客さんがすぐあきてしまう。
  • この層は、お金はそこそこ余裕があるが、時間がない。こういう層については、コンビニエント性や利便性ニーズが求められている。
  • 週末のショッピングはご主人やお子さんを連れて一緒に行くため、遊園地に行くことと同じで、スーパーに行って遊んで帰ってくるという感覚が求められている。
  • 健康には非常に関心があるが、「健康オタク」には見られたくないという感覚があることから、オーガニック商品は、普通のものと一緒の列に並べて客に選ばせる工夫が必要である。

(3) 食の供給者に求められる「食のH・B・C」

※H・B・Cとはドラッグストア(マツモトキヨシ)で打ち出したヘルス・ビューティー・ケアの略であり、ヘルス用品、ビューティー用品、ボディーケア用品売場をそれぞれ三つに棚割りし、販売促進するという意味であり、これを食産業にあてはめてみると、以下のとおりである。

  • Hは、「Health Conscious」(食産業は健康産業である)
    食を通じてお客様の命を預かっている。ある調査で、何らかの理由で食品の安全性に対して不安があると答えた人は95%、これは業界全体として考えていかないといけない。

  • Bは、「Brand Fidelity」(食品商売は信用商売である)
    雪印乳業の事件や狂牛病などにより、今は農水省も信用されておらず、食品を扱っている業者全体にお客様の目が不信の目で見られているということについて、食品産業全体で自覚すべき。

  • Cは「Cost Value」(価値ある価格)
    消費者が感じる適正価格とは、スペシャリティーとホスピタリティ(そこにしかない商品を買うという顧客満足度)が満たされ、初めてお客様がその価格に満足を感じることである。

(4) 中間流通業者に求められる今後のスタンス

  • 食品産業とはまさに循環している。どこか1社のメーカーが潤えばそれで済むわけではなく、どこか1社の小売業が潤えばそれで済むいう話でもない。もう全部つながっているという自覚が特に中間流通業者には必要。
  • 食の安全について、一度中間流通業者も生産者も製造者も消費者も同じステージに立って、意見を闘わせるべき場が必要ではないか。築地市場が豊洲に移るにあたって、食の安全保障委員会というものがあってもいいのではないか。そのことは消費者に対して非常に訴求する大きな力を持っているのではないか。
  • 協創・協働ということが共存共栄へ結びつく。生産者も中間流通業者も小売も目的は1つ、とにかく野菜が売れなくては誰も儲からない。最終的にお客さんが喜んでくだされば、全員がハッピーになれるという構造を考えてこなかったのではないか。魚も肉も野菜も調味料もあって初めて食になるわけであり、もっともっと一緒にお客様への提案を考えていく余地があるだろう。
  • 今、小売業は単品の売り込みというのは全く受けつけておらず、全体をいかにコーディネートできるかということが、市場の役割ではなくてはならない。それには仲卸だ、小売だ、農家だと言って反目し合っているのではなくて、お互いに情報流通をよくして、一緒に売っていく方法を考えるしかないのではないか。

2.質疑

(座長)
廣吉先生の分も含めて、ディスカッションしていきたいと思います。

(委員)
水産であれば、例えば鮮魚の大衆魚、特にこれが非常に単価の下落傾向が強い。今後こういう状況が続けば、再生産が非常に難しい。特に輸入原料が非常に多くなってきており、例えばすしの商材でも、タイ、中国等の海外で加工・生産されている。そういう形で国内生産の空洞化が始まってきている。消費地に一番近い市場で何らかの加工をし、付加価値を付ける等の提案しなければならない。

(座長)
家庭消費の減退傾向にあるということは、消費そのものが落ちているのと同時に、外食とかそういうものが増えたから、それで買わないということもあるのですか。

(講師)
そうですね。間違いなくそちらに流れている。ところが、あまりカット野菜というのも、実はみんなが期待しているほど出ていない。いろんな種類をつくっているところがあるのですが。

(座長)
何か世界的な流れとして、魚とか野菜がかなり高く評価されている。アメリカのファイブ・ア・デーというのも、これは国の政策としてやられている。スペインでも魚の需要を上げるような政策を持ってきて、それを追い風にしている。

(委員)
一方で安全という問題があります。実際に、我々、中間の段階の魚でも、結構丸の段階で鮮度保持剤のようなものを使っているものもあり、そういうものを使っているほうが売れるわけです。また、お客さんのニーズでこの方がいいというものを扱わざるを得ない。これは安全性を考えると、理想とは別に金銭の問題がありますから、どうしても商売になるほうにシフトしていっている形になってしまう。

(講師)
私、そういう意味でも今、おっしゃっていたようなことを主婦の方々とも共有できる場をつくっていくしかないのかと思っています。

(座長)
卸売市場で一番足りなかったのは、消費者との接点です。そこに集まる消費者とそれをパネルとして何か卸売市場と常に消費者から情報を取って、消費者に情報を普及させるとか、もしかしたら卸売市場の公共性は、そういう消費者との接点が常につくられつつ、プロの取引がされるという、何かそれが必要ではないか。そういうシステムもないと、卸売市場の公共性ということが出てこない。特別の何かをやるとしたら、卸売市場こそ消費者との接点と安全はプロであるというようなお墨付きが重要だと思います。

(事務局)
「今年はサンマが大豊漁だから皆さんお買い得ですよ」といった情報提供を発信するのは東京都の仕事と認識している業界の方がいらっしゃいますが、例えば今回みたいに狂牛病が起きた場合、そのときの対応や市場はこういうことで安全性は守られている等の情報はまさに都が発信すべきですが、旬のお買い得情報や三枚おろしのやり方等はむしろ皆さんの仕事ではないのか。だから豊洲に行ったときにそこのところをどうやって再構築していくかということです。

(委員)
食品の安全に関しては、売る側の小売業の人たちが全く勉強していないというよりも、僕らが思うのはプロが知らない。一体お前はプロなのかという人が非常に市場の中に増えているのではないか。プロ意識を持たないといけない。新市場に向けてプロとしての勉強をもっとしないといけないのではないか。

(講師)
一番問題なのは、農家が農家の間でしか通じる言葉しか使っていない。それは農協も市場もそうです。それから消費者は消費者で農業のことがよくわかりませんから、それぞれが全く違った言語でしゃべっていて、共通言語のないところで物が流通されている。中間流通業者というのは、通訳にならなければならない。

(委員)
結局消費者が何を求めていることを我々が中間でどこまで理解できるか、それを川上にさかのぼって伝えるというような役割をスムーズにできないといけない。

(委員)
市場で働いている私たち自身も勉強不足、情報不足があって、もっともっとプロに徹しなきゃいけない部分もある。そして、実際に私たちがもっともっとそういう情報を持って接しなければ正しい情報は伝わっていかない。消費者に対して正しいことを広めることが私どもの1つの責務かと感じております。

(委員)
結局、生産者も、中間の業者も、ある意味では買う物に非常に不安を持っている。市場のあり方云々ということだけではなくて、何かもっとはっきりしたものが出てこないのか。また市場業者は市場の中でずっと育ってきたという部分がありますので、発想を転換して、全く異業種の方や、川上、川下、全部含めた中でそういうものを見たり聞いたりというものをしていかないと、本当の問題点というのはなかなかわからない。それをつかまないことには今度の新市場云々という話も土俵には乗っかれないのかと思います。

(座長)
閉鎖的な今までの考え方から脱皮せざるを得ない。一番重要なことは、コミュニケーション・ツールをどうつくるかということです。私は消費者の声をどういう仕組みで取り入れているのか、どういう形で消費者にフィードバックしているのか。コミュニケーションのいわゆる交流をどうつくり出すか。

(講師)
一方通行の情報というのはもうだめです。最大のコミュニケーションのメディアになるのは、私は売場しかないと思っている。そこでおいしいものを試食した、それから、そこで試食品を提供していた主婦がすごくおもしろいこういう大根の情報をくれたというのを、その主婦がバーッと隣近所の自分の仲間にしゃべって、それを言うのがまた嬉しい。何かそういう形でコミュニケーションというか、ファンづくりをしていく一手間が必要ではないか。

(委員)
プロ集団であってほしいと思う。今、産地側と消費者が何を考えているか商売をしている自分自身がよくわからないわけです。加工の話でソリューション・ビジネスというのは本当に大事である。これは単なる何か加工食品が認められているのではなくて、リパック、カット、そこでの管理等が求められている証。プロ集団は、一番いいファシリティーと証言を整えた人材も要るところで、何かシステムとしてコミュニケーション、勉強会も大事。しかし、何かスキームを考えてほしい。

3.その他

事務局より次回の懇談会の内容と開催日程について各委員に説明

18時38分 閉会

ここからサイトのご利用案内です。

サイトのご利用案内ここまでです。