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新市場基本コンセプト懇談会報告書 第1章

第1章  消費・流通・供給構造の変化と市場の対応、消費・流通・供給構造の見通しに関する議論

Ⅰ 食生活・消費の変化の見通しと卸売市場の対応方向について

1.食生活と消費の変化の態様

(1)消費形態と食の価値観が変化
  • 家族で食事というのは、若者はほとんど意識していない。子供に「日曜に、食事に行かない?」と聞くと、子供達はスケジュール表を持ってきて、「一応空いてるけど、何のために?」と訊く。理由がいるんです。もう、「家族する」という動詞で考えないと食事が一緒にできない。
  • コンビニエンスストアや大学で若者に聞くと「果物でさえ、みかんの皮を剥くのが嫌」なんですね。りんごの皮を剥くのも問題外。頭のついた魚を触るなどは論外なんです。
  • この秋は、サンマが豊漁で食べる機会が多かったんですが、唯一、丸のまま塩焼きしたものは食べてないですね。昔は産地にしかなかったサンマの刺身が東京でも食べられる。イタリア料理のカルパッチョや香草焼きみたいなのは結構食べるとか、消費者の食べ方はどんどん変わってきている。市場は、そういう提案をできるようにならないと・・・。
  • 有機で美味しくて農林水産大臣賞を取った大根だと言っても、それだけでは売れない時代が来ています。単品ではなく、食材全体をコーディネイトして消費者に提案できるかが、市場や小売の役割でなければいけないのではないのでしょうか。
  • 市場が素材を売る場合も、外食・中食向けにするなど、販売対象者や商品そのものの形態が変わっていくことを考えることになる。
  • 都内では、今、ゴミが週2回しか出せない。素材のまま買って調理できるのは曜日が限・1963年頃は、魚は貧乏人の食べ物だった。1970年頃から魚は肉より高くなった。それでも、今、水産物の家計消費は全世帯支出額の12%を維持している。
    ということは、もう、日本人は魚食民族だから動物蛋白は三度の食事のおかずに魚を食べて摂る、というような意味で消費を考えたら間違う。この前のようにマイワシが800円もすると、マイワシは大衆魚ではなく金持ちの食べ物ということになっていく。
(2)中食・外食の増加
  • ビジネスとして考えたときに、素材だけではビジネス化は無難しい。だけど、外食も割高だったりどこか寂しい。そうすると、これからはやはり中食かなという気がします。
  • 中食をどう定義するかによるが、魚の切り身も中食と見ると、家で素材から作る料理というのはほとんど無くなっているでしょう。35歳の主婦を対象にした調査によると、買っている物のうち丸のままの素材は15%程度だと言うんです。だから、素材を使わせる場合でも、消費者の面倒くささや気持ち悪さとかを軽くしてあげないと売れない。飲食店も、1次処理された食材を買ってきて、ちょっと焼いたり、炒めたり、チンしてというのが出ている。
    られるという状態にある。魚の臭いも隣近所に遠慮してということになると、素材を売るためには、そういうところまで考えることが重要。
  • 今の若い人達は、ちょうど外食から学習している期間ではないだろうか?いろんな食事を覚えれば、結構、自分でもつくろうと思うでしょう。

家計における食糧費支出構成比の変化

(3)健康、安全・安心は消費のキーワード
  • アメリカでは、健康のために1日5単位の青果物を摂ろうというfive a day キャンペーンが功を奏して、1999年までの9年間に青果物の家計内消費が24%伸びた。
  • 日本能率協会総合研究所によると、日本人が健康のために食べる物の第1位は緑黄色野菜で、上位20位のうち18品目は野菜が占めている。

    しかし、日本では、ホール(素材のまま)の野菜の家計内消費が99年までの11年間に16%も減っています。

  • 30~40代の主婦は、健康への関心は高いのに「健康オタク」には見られたくないんです。無添加、有機農産物コーナーがあっても近づかない。無添加だろうが添加物が入っていようが、有機だろうが完熟だろうが、同じ売場に並べてあって、お客様の選択で選べるというほうが望まれています。こういうことを知っていないと、流通業者は、小売店と付き合えないんです。
  • 食産業は、安全性の問題も含めて健康産業です。何らかの理由で、食品の安全性に不安を持っていると応えた人は95%もいます。
  • 実際にどういう物が売れるかというと、鮮度保持材のような物を使っていると思われる物の方が売れることがある。消費者は、食品添加物を使うのはだめ、けれど、日持ちもしないとだめと思っている。一体、あなたはどっちなのと言いたくなりませんか?

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2.食料消費の中期見通しについての一考察

(世代の特徴から見た考察)

(1)今後の20年間の見通し(団塊・しらけ世代が多数派の間)
  • 日本人の一人当たり水産・青果物消費は、この十数年、長期安定で推移(家計調査統計)
  • ただし、食料の消費形態は、生鮮食材から調理・加工食材へと移行
  • 消費者の生鮮嗜好、和食が多いパワフルシニア(金持ち、時持ち、健康持ち)も健在

→団塊の世代、しらけ世代(現在、40~55歳で人口数の最も多い世代)が健在な今後20年間は、食料消費は横ばいで推移するが、消費形態は大きく変わっていくだろう。

(2)20~30年後(ハナコから団塊ジュニア:25~40歳が中高年になる時代)
  • 豊かな物に囲まれて育ち「便利は当たり前、安くてモノが良くなければ買わない」世代
  • 化粧品という物自体を買うのではなく、「綺麗」になることを買う世代。(物や機能の消費から、感性やこだわり、情報・時間・空間へと、消費の内容概念が転換)
  • 平日の買い物は苦痛。主人と子供を連れてスーパーに行って遊ぶのがショッピング

→多様な食の場面、食材を提供するなど売り手の努力で、食消費の維持・拡大は可能

(3)30年後以降(ポケベル、携帯、IT世代:18~25歳が中高年になる時代)
  • 最早、食べることに価値を見出せない世代の登場
  • 安くて、美味しい物(品質のよい物)を提供しても、評価できない

→健康や生活にとっての食べることの意味の再構築、生鮮品を食べる習慣付けが必要となる時代が来るかも知れない。

日本人の食品群別摂取量の年次推移

(参考)食料消費の中期見通し:97年OECD未来フォーラムのキーノートより

食料需要の伝統的な決定要因は、人口と所得増加、食習慣の変化である。しかし、物的豊かさを実現してしまった成熟社会(先進国)では、消費者の嗜好や食事の変化、安全性や環境への関心など多様な要因が需要を決定する。

  • OECD加盟国の食糧消費は停滞傾向にあり、よしんば伸びることがあっても少ない。
  • 消費全体に占める食品と飲料の割合は、日本では1995年の19%が2010年には14%強に落ち、英国では1994年の18%が2010年には15%まで落ちることが示されている。
  • 安定した食料消費の背後で、目を見張るような消費の多様化、細分化が展開している。
  • 老人人口や一人家庭の増加は、家計の小型化を増幅し、食品包装への要求や食品消費に関する社会的影響を与える。(EUでは一人暮らし世帯が現在の30%から2010年には36%、日本では23%から28%にまで増える。)
  • 女性の職場進出が増えたことや老齢者の増加により、配達やケータリングサービス、外食や調理済み食品などの需要が増える。
  • 消費者の嗜好の多様化やOECD圏内の少数民族の生活水準が改善され、エスニック料理の需要も高まるだろう。
  • バイオテクノロジー応用の発展に対しては、健康、安全性、倫理、環境などが消費者行動の重要な特徴となるであろう。

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3.消費の変化に対する卸売市場の対応策についての意見

(1)食に対する価値観の変化への対応策について
  • 食べ物を購入することより、食材がもたらす情報・文化・生活スタイルの価値を購入することに価値を求める消費者が増えていく。
    →市場業者は、素材型食材を効率的に提供するだけでは済まず、素材、食材のプロフェッショナル、食のコーディネータとしてのノウハウをますます求められる
  • 食卓が家庭外のいたる所にできていく中で、売る側の市場ではチャネル選択が拡大
    →顧客が多様化する中で売上げと収益を維持するには、自分の店が提供する価値・サービスを買ってくれる顧客を集めて、スケール・メリットを出す必要が高まる。
  • 消費の多様化に対する売り手の努力次第で、食のマーケットは拡大できる。
    →市場として、買出人の向こうにいる消費者に近づくシステムを持つことが必要
(2)食生活の貧弱化への対応策について
  • 味覚喪失、食材が分からない、料理ができない消費者も増えていく。
    →素材の捌き方を知らない、臭いや生ゴミが出るから家で料理できないなど、消費者の抱える問題を解決できる食材提供のあり方を考える時代になっている。
  • 食事を栄養剤・健康飲料等で代替したり、食材を買わない消費者にはどう対応するか?
    →生活習慣病や骨粗鬆症の増加が食生活と密接な関わりがあること、生鮮食料品摂取の重要性などについても、市場で学べるような工夫が必要ではないか。
  • 栄養価、鮮度、旨味の数値化が進み、市場の目利きに対する評価が低下する時代が来てしまうかも・・・
    →市場人が考える美味しさ、本物を消費者に体験してもらう仕組み、食生活の提案、商品開発、食情報の発信等付加価値を積極的に提供する必要がある。
(3)健康、安全・安心を提供するための方策
  • 市場を通る物が、安全で衛生的であることの説明責任が求められてくる。
    →信用を失うと、市場の存立基盤が崩壊する反面、素性が確かで安全を保証できるシステムを確立すると、市場は消費者の絶大な支持を得られる。
  • 食品添加物は嫌だけど、日持ちして甘さや塩分を抑えた食品をなど、消費者が抱える矛盾した要求に応えるには・・・
    →消費者と生産者・流通業者が共通の言葉で話し合える仕組みの提供を
(4)素材の流通から加工機能までをカバーする市場づくりの提言
  • 市場も生鮮素材から加工品までを幅広く集荷・分荷していく必要がある。
    →加工品の扱いを増やすときにも、市場では素材から扱いますよという扱い方があっていい。素材にこだわりを持った加工品の開発や販売は、市場の武器だ。
  • 最高の素材を集めて提供するところだから、最高の惣菜ができるんです。総菜屋さんの惣菜とはちがうんですよというような、築地市場の心意気というか、「これはどうだ!」と言えるところが欲しい。

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Ⅱ 末端流通、中間流通業者の流通再編についての考察

1.小売業における新たなシステム構築の動き

(1)IT時代のビジネス・モデル
  • ネット販売や電子商取引などのe-コマースは、日本を越えてワールドワイドなものに発展していく可能性を持っている。既に、欧米の大手小売業を中心に世界中の流通業者と生産者が取引するネットワークが幾つか生まれている。
    ノルウェーやチリの養殖サーモンはこれらのネットワークが価格形成機能を持つ、あるいは卸・仲卸は集荷の際にこれらのネットワークに参加することを求められるというような時代になっていく可能性がある。
    どのくらい使いこなせるかはまだわからないが、考えてみると、国内で取引するのも地球規模で取引するのも大きな違いは、もうない。ITは国内の問題ではなく、ワールドワイドで電子商取引が進むという問題だ。
  • 電子商取引が地理的な壁と範囲、時間距離を縮めるとなると、卸売市場制度のなかにある特定の開設区域、取引業者、あるいは代金決済制度といったものが陳腐化する、役に立たなくなるということが起こってくる。
    現に電話やファックスでの注文が増えている中で、取引の場は卸売場、仲卸売場に限るというような考え方で、将来もやって行けるのか。
    仲卸業者がインターネットで地球の裏側から買付けた物を直接得意先に納品するというようなことを認めざるを得ない時代に、買手が市場に引き取りに来ることを前提とした市場づくりでいいのかといった問題がある。
(2)繁盛する小売店の条件
  • 繁盛店と言われる小売店の多くは、生産者や問屋から「是非、お宅で売って欲しい。」、消費者から「是非、あの店で買いたい。」と言われるようなものを持っている店です。
    お宅の店で売って欲しいと言われるということは、「良い物を持っていけば、ちゃんと評価して高く買ってくれる。」、もちろん買ってくれる以上、売り込む力を持っているということです。また、生産者が自ら語らなくても、小売店が商品の良さをお客に知ってもらえるようなことをちゃんとやっているということです。
    では、消費者に「あの店で買いたい」と言われるというのは、良い品物が安く買える、わざわざ高い店に行くことはないので、「安い」ということは大事な条件です。あるいは、良い品物はそれなりの値段がするけれど、非常に商品の説明が行き届いていて、その値段で買うことが納得できる、そういう対応をしてくれる小売店です。
    市場の卸、仲卸さんも、そう言われるような努力が必要でしょう。
  • 日本の魚屋、八百屋、肉屋さんが減ったのは、スーパーと同じ売り方をしてしまったところにも、大きな原因がある。パッケージに入れて、冷蔵ショーケースに並べて売るのなら、魚も野菜も肉も置いてあるスーパーには敵わない。
    スペインの魚屋さんは、パッケージ物は絶対に売らない。専門的な品揃えをして、その日その日でお買い得品が変わって、常に目新しい発見がある、切り身加工のサービスがある、そういう店づくりでスーパーと勝負している。また、卸売市場の業者がそういう売り方を、一生懸命支援している。
    消費者も、パッケージ物はスーパー、切り身にしてもらうのは専業店と使い分けている。
(3)流通外資が目指す取引・物流システム
  • カルフールやコストコのような大型店が日本でどの程度成功するかは、まだ予測できない。彼等は日本で見込みがあると思えば多店舗展開するし4-5店舗やってみて、取引・物流システムが自分達のモデルに合わないと思えば、割り切って撤退するだろう。
    仮に、彼らが撤退した場合も、日本が勝ったという話ではなく、日本型流通と彼等の流通システムが、グローバルな世界で競争していくことになる。
  • 流通外資の特徴のひとつは、メガストア方式の採用だ。
    彼等は、徹底したローコスト・オペレーションをやって利益を出すためには2000坪、4000坪、5000坪が必要な店舗規模になるという発想で店舗を造っている。納品される商品をそのまま売場に入れて陳列するためには、7mの通路幅と定められた場所に商品がスッと入るレイアウトになる。
  • コストコの場合、4000坪で4000アイテムの商品を扱うので、1アイテム1坪となる。日本の感覚では、何でそんな無駄な陳列をするのか、陳列単位を小さくして品数を増やせばとなるが、彼等は、客が一番期待している商品、ブランドをどこよりも安く売る、絞り込んだ特定商品が売れる店舗をつくるということで、あえてああいうスタイルを採用している。その相手に、日本市場の研究が足りないというふうに見るのは間違いだ。
  • 流通外資の特徴の2番目は、世界のどこに出て行っても、生産者と直接取引をして流通コストを下げるというビジネス・モデルを採用していることだ。ただ、卸売業が発達している日本では、そう簡単に直接取引できないので、妥協して問屋の力を借りる姿になっているが、それは、仮の姿だと考えた方が良い。
  • 流通外資は、効率的、あるいは非常に効果的に店舗を経営する力、ノウハウをもっており、侮れない。そういう相手と競争する時代に来たということを、市場の人達は考える必要がある。
(4)高齢化社会では宅配が主流になるのか?
  • 高齢化社会になったとき、高齢者がわざわざスーパーまで買い物に行くのかなという気がします。生協やスーパーで個人宅配的なものが増えてきて、そうなるとやはり市場外流通ということになってしまうのでしょうか?小売店が復活するのか、宅配が普及するかの分かれ道に来ている気がします。

    →今、健康でお金と時間がたっぷりあるパワフルな高齢者が増えている。量はともかく魚も食べる。家で宅配が来るのを待って、口紅をつけるのは配達に来る人のためというのは寂しい。体が動けなくなったら宅配でいいんですが、歩ける間は出て行くということを想定して、高齢者が街に集まってくる仕組みをつくった方がいい。
    →多様な社会だから、どちらもありうると思う。要するにチャネルの多様化に卸売市場がどう対応していけるかという課題だ。アメリカの宅配のメインターゲットは、大学の研究室という話がある。教授と学生達が「コーラでも、ビールでも飲もうか」というわけです。宅配が確実に売れるのは、コミュニティとかパーティとかの集まり。友達の家での集まりとかいうのが出てくれば、宅配もあるでしょう。

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2.卸売機能の再構築を進める市場外流通業者

(1)加工食品・日用雑貨卸売業に見る流通再編の動き

1)問屋中抜き論の背景

  • 加工食品や日用雑貨など一般食品の世界では、小売業が成長して寡占化が進むと、メーカーと小売チェーンが直接的な取引関係を結ぶ段階へと移っていく。とりわけ、ヨーロッパのように、大手数社で市場シェアの40-50%も占める世界では、そうで、これが昨今の問屋中抜き論の背景になっている。しかし、卸機能を造ってこなかった日本の小売業が、卸を排除できるかとなると、話は別だ。
  • 1991年までは、全国の卸売業の商店数、従業員数、年間販売額は基本的に上昇傾向にあった。しかし、1991年以降、これが急激に減少している。特に、1店だけで営業している単独店の比率が減少している。
  • 小売と比べると卸売業の営業利益率はかなり低い。総平均で見ても、小売の4%台に対して卸は1%台にすぎない。これに対し、販売・管理費比率、売上高対人件費比率は小売が高くて卸が低い。コストが低い卸が、コストがかかる小売より利益が低いというのが日本の特徴。1%しか利益が出せないから、新しいことをやろうとしても投資ができない。情報システムを導入する、物流を改善しようと思っても困難という状況にあり、投資ができないから利益が下がるという悪循環に陥っている。
    このような状態を続けていると、流通全体の中で卸が果たしている機能・役割は、営業利益率1%台を稼ぐ程度のものでしかないんですかということになりかねない。
  • 日本では、チェーンストア、スーパーを含めて小売は、メーカーから直接仕入れて配送や仕分けを自分でやるという機能を持っていないので、卸売業の介在が必要だった。
    ところが、卸でなくても物流業者、輸送業者がその機能を取って代わるという動きが出てきている。今後、情報化が進めば、生産者と小売が、何時、何処で、何が、どう動いているかの情報を共有して、物流業者にこうしろと指示をすれば、物流ができる時代になっていく。卸の領域に物流業者が進出しようとしているのが現段階と言える。

卸売業と小売業の経営指標

(注)卸売業については資本金もしくは元入金の額が3,000万円以下または従業員数が100人以下の法人または個人を対象にしたサンプル調査であり、小売業については資本金もしくは元入金の額が1,000万円以下または従業員数が50人以下の法人または個人を対象にしたサンプル調査。

(出所)中小企業庁「中小企業の経営指標(各年度)」により作成。

食品卸売業の売上高ランキング

2)食品卸業者の統合・再編の狙い

  • 今後、大手小売業は、巨大外資進出への対抗もあって、幅広い品揃えで全国展開していく。そういう小売業の動きに応じて、幅広い品揃えを全国的なネットワークをつくって供給できる体制を築いて行こうというのが、加工食品や日用雑貨の卸の共通課題になっている。大手同士の卸の合併や、大手が地方の中堅卸を吸収するというのは、自分が持っていない商材や自分が弱い商材を手に入れるという狙いからきている。
  • 食品スーパーの売場というのは、金額ベースで、生鮮が一番多くて約5割、加工食品が2割、日用雑貨が3割の構成が標準。この2割の加工食品売場をめぐって、数社、数十社が争うとなると、卸1社あたりのシェアはほんの数%でしかない。そこで、この2割を全部引き受けてしまう。その上で、2割以外の売場、生鮮にも手を広げて行こうというのが、菱食や国分の戦略。卸売市場のみなさんは、こういう勢力との競争にさらされている。
  • 加工食品卸では、単に規模を大きくすれば良いのではなく、単品単位で仕分けする、温度帯別の商品を一括して扱えるといった小売業のニーズに沿った形で、商品を供給できることが大きな課題になっている。こういう中で、うちのチェーンのこの地域の店舗は、一括してお宅に任せるというケースが増えてきている。市場の卸・仲卸にも、そういう機能が求められてくるのではないか。
(2)市場外流通業の動きへの市場の対応策

1)多様な商品群を一括納入できる機能の強化

  • 市場外流通では、従来の業種別卸から脱却していくところだけが生き延びており、これからは、業種別流通では通用しないということを頭に入れて、市場も対応する必要がある。
    加工食品を扱う市場外流通業者が生鮮分野に乗り出してきている以上、生鮮を扱う卸・仲卸の側も加工食品の方に近づこうという努力をしないと、展望は開けないのではないか。
  • 青果の場合、築地市場の魅力というのは、他の市場にない多種類の野菜があるということと、青果と水産の連携があるということだ。水産の仲卸さんから、こういう店が仕入れたがっているけれどどうだろうかという紹介が結構ある。
    青果の仲卸は水産に比べると、素材の専門家というより、とにかく幅広い取扱いをして納品するという機能が強い。自分のところに無いのなら、ほかから集めてきて、品揃えをして納めてしまうというやり方を取っている人が多い。
  • 外食産業や量販店がチェーン化しているといっても、1店1店の扱いは多品種少量。だから、仲卸が互いに連携して、鮮魚もマグロも塩干加工品もすべて一括納品してあげて、お客の仕入れコストを下げてあげるということが重要ではないか。それが本来の仲卸の機能なのに、これができていないところが、市場の問題ではないか。
    市場は、従来の顧客である独立自営の小売店や飲食店への対応と、量販チェーン店への対応とをはっきり分けた上で、それぞれに対応できるシステムをつくることが重要。
  • これまでは、品物を市場で受け渡しすることを前提にものを考えてきた。しかし、量販店にしても外食産業にしても、センター渡しや店舗渡しのための機能や価格でものを考えている。また、個々の食材の価格・コストではなく、トータルな仕入れ価格・コストが市場を通した方が有利かどうかというものの考え方になっている。

2)リテール・サポートの強化

  • これまで、リテール・サポートというのは、卸が中小小売商や、ローカルなスーパーに対して行うときに使われる言葉だったが、最近では、大手小売業に対するものも含めて使われている。商品を一括して納品するだけではなくて、商品の陳列・棚割り提案やクロスマーチャンダイジングの方向に進んでいる。
    前者では、自社が扱っていない商品も含めて、一つのカテゴリーの棚を、他社から預かっている商品も含めてどのように陳列したら売場の売上げが最大化するかという提案を行っている。後者では、関連陳列、加工食品の側から生鮮を取り込んで、たれや調味料と生鮮を組み合わせた売場を提案していくような動きが強まっている。

    →卸・仲卸が生産者と小売から排除されないためには、卸・仲卸がそこに居ることによって、コストが下がるし、流通が効率化されるし、小売の経営に役に立つ、そういう機能を持った存在になる必要があるのではないでしょうか。

  • 生鮮素材というのは、工業製品のように商品開発をしてつくった商品ではない。量販店チェーンだからといって、お店ごとに求める魚のグレードが違うことが多い。だから、細々した注文に応じて品揃えすることが、仲卸のリテール・サポートではないか。

    →仲卸の経営規模が小さいことが問題なのかもしれないが、量販店の要望に応えて切り身加工をするとか、販売促進の手伝いに行くとかいうリテール・サポートでは、やればやるほど利益が出なくなる。

3)提案型営業の勧め

  • 加工食品を扱っている小売・卸が頭を悩ましているのは、どんな生鮮素材をどう組み合わせたら、どういう食材ができるのかが良くわからないということだ。卸売市場が専門性を生かして提案していく余地は色々ある。そのためには、生鮮を扱っている仲卸も加工食品を研究していく必要があるだろう。生鮮しかわからない、加工品しかわからないでは、これからは通用しなくなるかもしれない。
  • 市場は消費者に、どんな加工食品があって、どれとどれを組み合わせるとお手軽な料理ができるという提案や、人気のある加工食品を生鮮素材から本格的につくれば、もっと美味しくなりますといった提案ができるのではないか。
    一方、スーパーに対しては、どの加工食品や調味料と組み合わせるとこの魚をこんな風に食べられるといった提案が必要。スーパーの担当者は、生鮮だけでなく加工食品も売りたがっているのだから。
  • メニュー開発やメニュー提案は外食チェーンや量販店等末端業者の仕事であって、中間流通業者である市場は、「そんなことは考えなくても良い。量販店の商品開発部が市場業者に期待しているのは、あるメニューに必要な素材をきちんとした温度管理と品質管理の下で、ローコストで安定して提供できるのかどうかの質問に、きちんと答えてくれることだ。」という意見もある。
  • 青果では、メニュー提案や商品開発機能を持たないで商売をしていくというのは、現在でも難しくなってきている。素材だけを売ろうとすると、値段が高い安いだけの話になってしまう。そこに何かサービスや付加価値をつけることで、スムーズに商材が流れていくような努力が、これからますます必要になる。例えば、容器をとっても、流通の中で最良の形の物になっているのか、温度帯もこれでいいのかといったお客の要望をひとつひとつ満たしていくことをしないと、市場に新たな発展はないのではないか。

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Ⅲ 川上の変化の態様と卸売市場が取るべき対応についての意見

1.水産物の供給構造の変化と新市場の課題

(1)水産物の供給構造と産地の状況

1)大変動した水産物供給構造

  • 水産物は、先進国も途上国も世界的に消費が上向きで、漁業資源の過剰漁獲問題がますます深刻になるという状況にある。その中で、漁業者が進めている資源管理型漁業への転換、高品質・高鮮度な沿岸漁業づくりへの支援を市場としてどう対応するのかという課題が大きい。
  • 1960年代に年間100万トン以上水揚げする漁業国と言えば、日本と旧ソ連を中心にペルーとかチリを含めて10カ国もなかった。ところが、今は増えて20数カ国ある。世界の水産物供給に占める日本のウェートはどんどん下がっている。
  • 2007年をピークに日本の人口が減っていき、経済力も翳りが見込まれる。一方、中国をはじめ東アジアの経済発展は勢いがある。これらの国々は、日本が歩んだ道を辿っていくと考えられ、蛋白資源の獲得競争が増す中で、今までのように水産物の大部分を日本に輸入し続けられるかどうかは疑問だ。
    しかし、日本人の嗜好に合う水産物を、養殖技術の供与や世界的な漁業資源の開発と管理によって集めることは可能だろう。

2)漁業者の期待に市場は応えているか

  • 産地回りをしていると、築地市場は今、昔の名古屋市場のようになりつつあるという声を聞く。とにかく持って行けば売れるんだが、値段はでない。有り難い市場だけれど興味はないと。つまり、定番物でスペックが揃った物、量的に大きな物は、築地はそれなりの値段を出す。けれども、そうでない物はきちんと評価してくれない。
  • 消費者は、美味しい物ちょっぴりという魚の食べ方になってきている。一方、漁業者は、200海里体制に移って、唯一残された沿岸漁業を維持するために、ロットは少ないけれど品質の良い物を選別して、手間とコストをかけて消費地に送っている。
  • 築地市場は、こういう川下の変化と川上の努力を結びつけて、双方から喜ばれる商売の仕方をしているとは言えない。
  • どんな値段になるかわからないので、築地にはあまり出荷したくないという声は、確かに聞こえてくる。安くても、量販店相手なら利益は計算できる。
  • 今、ローカルなマーケットというのが出来ていて、レジャーとか観光とか、地域の行事とか料理店の産直というところに、ロットが小さくても引き抜かれていく。コストが嵩む築地や札幌に出すよりも、小さな取引先とつながるシステムをつくった方がいいという取り組みも見られる。
  • この一、二年の間に、500隻ある遠洋漁船が3分の1ぐらい淘汰される可能性がある。消費地市場はそういう産地の事情におかまいなく自分達の都合で物を考える。そういう中で、生産者がデリバリーも含めて、自分で流通をやろうという動きがでてきている。

新市場に求める施設機能として必要だと考えられるもの(水産)

(2)産地から見た新市場の課題

1)売り手と買い手をつなぐ情報機能の構築

  • 漁業者が、今、小さい魚はなるべく獲らないようにしようとか、太らせて獲ろうとかいう時に、「市場が、おれは知らん。」と言うことはできないと思う。
  • 水産の産地では、何時、どれくらい、どのサイズの魚が水揚げされていて、何処に出荷されるのかという情報を見て、出荷先を選ぶ努力をしている。例えば、アジでも、たたき用、刺身用、焼き魚がいい物と色々ある中で、入荷した現物を見て値を付けて、「沼津から10トンぐらい入荷して、今日のアジは安い。」程度の情報を流しているだけでは、基幹市場の条件は満たせない。何千という漁業者から水揚げ情報を集めて、売り手と買い手の必要な情報に仕立て上げることをトータルでやらないと、水産の基幹市場とは言えない。

2)グローバル流通への対応

  • 水産物は漁場と市場が偏在しているので、もともと国際商品。水産物はボーダーレスで国境がないと思って良い。その中で、今、550億ドルと言われる世界の水産物マーケットの3割は日本が占めている。世界中で魚を食べはじめていると言っても、キー・ステーションとしての日本の役割が、そう簡単になくなるわけではないし、むしろ積極的に維持することを考えるべきだ。
  • 新市場を水産物の世界的なマーケットのキー・ステーションと位置づけるのなら、卸も仲卸も、地球の裏側まで行って商売してくるということも考える必要がある。
  • 輸入物や養殖物では、出荷段階で規格や品質が揃えられているが、そうでないものも多い。市場は、主体的に海外に対して、定番ではないものを積極的に引っ張ってくるという機能が求められてきている。そのためには、市場内に保税上屋を持って市場内で通関ができるといった機能を持つのは当然だ。築地は、遅れている。

3)物流システムの改善

  • 産地側から見ると、築地市場の集荷力、価格形成力が落ちたというより、流通のシステムが大きく変化したということだ。その変化への対応が遅れているために、今、市場の存在価値というものがちょっと脇に置かれて、効率化の方へ目が行っているような気がする。
    マイナス15度で入荷してくる冷凍魚を、常温下で4時間以上並べて、解凍してしまうのは当たり前というような現状では、市場の地盤沈下は避けられない。産地や消費者の期待に応えられる物流システムの整備は不可欠だ。
  • 北海道の釧路からフェリーを使って10トントラックで築地へ持ってくるのに、早くて3日かかる。だから築地で売るのは、通常、4日目になる。クロネコやペリカンに頼むと、札幌から沖縄まで翌日に届く、それも、定額料金で。また、秋田から東京まで、10トン車で来ると高速料金は3万円かかる。これは、市場の人達の責任とは言えないが、こういうことも含めて、物流コストの削減を考える必要がある。

築地市場までの経費について

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2.青果物の供給構造と消費の変化と新市場の課題

(1)農産物供給の長期見通し

農産物では、食糧供給国を中心にした農産物過剰問題の処理が基本的な課題になって、WTOの農業協定交渉などが進んで行くという流れになる。その中で、国際競争力のない日本の農産物を市場としてどうしていくのかという問題が大きい。

(参考)農産物供給の長期見通し(97年OECD未来フォーラムより)

世界農産物の生産高は、2010年まで年平均1.8%の増加が見込まれている。これは、世界の人口増加の勢いが徐々に落ちているため、一人当たりに必要な食糧の生産をまかなうには十分なペースである。(1990年から1995年までの実際の人口増加が年1.4%だったことから、国連は2050年の世界人口の予測を94億人へと下方修正した。(1996年))

  • OECD加盟国では1人当たり食糧需要は横ばい状態で、食物の量よりも質と組み合わせの変化が大きい。
  • 今後20年間、OECD圏外の人口は毎年8000万人ずつ増加すると予想されている。アジアとラテンアメリカでは、経済成長、所得増加、都市化などにより食糧需要が増加し、地域によっては食糧不足の深刻化が予想される。
    (供給の不確実性)
    供給サイドの懸念は、土地、水その他天然資源の有効性と生産性の停滞である。
  • 化学肥料や殺虫剤の集中的な使用、地下水の汲みすぎが原因で水資源は世界の多くの場所で枯渇している。都市化、侵蝕、塩土化、浸水、森林保護の必要性等により、耕地は将来それほど拡大しないであろう。
  • 世界的に天然の魚が減り(回復可能な水域もある)、養殖魚の拡大も次第に環境的限界に直面すると見られる。
  • ヨーロッパで見られるように、消費者や政府のバイオテクノロジー(遺伝子操作等)の応用、化学肥料や除草剤の使用に対する性急な拒絶反応が、技術の発展を妨げ、結果として将来の農業の生産性向上を阻むであろう。
(2)青果物の供給構造の変化から見た新市場の課題
  • 日本の農業構造から見て、海外との棲み分けが進む物というのは予想できるし、海外産の青果物を国内物と同様に取り扱うことが必要になる。国内産、輸入物の双方を幅広く品揃えして多くの情報を持った流通が可能にできるということが、卸売市場流通の特徴になる。
  • 産地が大規模化して、規格化・ブランド化が進んでいるが、小売店の要望を聞いていると、スーパーを含めてブランド品、規格品だけではなくて、地場野菜や季節の特産品などロットの小さい品物への要求が結構ある。量販店は、この部分についても生産者と直接取引きしようとしているが、うまくいく例は少ない。量販店、一軒の八百屋さんを問わず、個々の生産者と小売店を点で結んで行くような仕事の仲立ちも、卸売市場にとって非常に重要である。
  • 青果は、中途半端な情報取引になっている。卸も生産者も、過去のデータや生育状態を記録したデータに基づいて月・週単位の予測を立てているが、予測が正確性でない。昔は、競り人が産地回りをして、土の色や葉の状態から成長状態を判断していた。数字のデーターを蓄積するだけではダメで、最後は、人間の出番になる。しかし、卸が産地回りをやらなくなって、プロの目を持った職人芸的なことができる競り人が減っている。これでは、大手のスーパーや商社と変わらず、卸は原点に戻る必要があるのでは。

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