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新市場基本コンセプト懇談会報告書 第3章

第3章 新市場づくりへの懇談会委員の提案

Ⅰ 各委員から出されたコンセプト案

1.21世紀の生鮮食料品流通の基幹市場を目指すべき

  • 札幌にも青森にも中央市場水産物部があるが、一番の出荷先は東京だ。東京に人が集まり、商売の機能が集中していて、はじめて地方の都市の集散機能が成り立っている。
    海外へ行くと、アラスカも、ノルウェーも、東南アジアも築地の相場を見ている。鮭、マグロ以外の非常に細かいもの、輸入が大部分の海老でも差別化して付加価値のある物が日本から海外へ出て行くので、海外の産地パッカーも築地の相場を取っている。
    ところが、築地市場の業界の議論を聞いていると、こういう築地が持っている集散機能、グローバルな拠点機能というものを失くしてしまうのかという気がする。
    日本の遠洋漁業が、もうほとんど回復できないものになって、中国に漁業の中心が移ってしまい、築地が持っている情報の価値が広州とか上海とか大連に移ってしまうかもしれないときに、都民の台所というような発想で、築地の将来を考えていいのか。
    消費や物流の変化がある中で、再編しようによっては、新しい価値をますます生んで、日本の水産物流通のインフラとしての機能が強化されるというぐあいに、新市場を見るべきだ。
  • 20年後、30年後に流通がどんなに変わっても、東京という首都圏は日本で一番人口が集中している場所だろう。人口が多ければ、消費需要は大きいし、多様な流通機能が集中する。そして、大きな需要を効率的に物流させるシステムは必要であり、新市場はその基地としてつくっておく必要がある。
    要するに、新市場をつくるということは、人口が最も多い東京の中に、食品流通産業を集積させる機能を持たせるということである。
    その場合、物流ニーズの多様性に的確に対応できるかどうか、首都圏の基地以上の機能を付与するときに、グローバル化をどこまで取り込めるかが大きなテーマになる。
  • 今、全国に86の中央卸売市場があるが、年間200億円ぐらいしか売上げのない中小都市の市場は淘汰されるところに来ている。だから、将来、市場の数が減っていって、9から10市場ぐらいのメインの市場に機能が集中せざるを得なくなる。

    都道府県ごとに同じ機能を持った中央市場を置いて、全国一律にやっていくという政策は、通用しなくなり、築地市場の重要性は、将来、高まって行く。

2.安全・衛生・環境に優れた市場づくり

(1)健康・安全保証委員会の提案
  • 公的な卸売市場の役割は、良質な食品を安定供給することだ。良質な食品の条件は、美味しくて、安全で、体に良い食品、地球環境に付加を与えない取引・物流システムの下で流通できる仕組みだと思う。
  • 生鮮食料品流通の拠点である市場として、「私たちは、消費者の健康や食品の安全を保証するために、市場固有の基準の下で栽培方法や品質の表示、安全検査や品質管理を行い、新市場ブランドとして提供して行きます。」と言えるシステムを構築することが市場業者の社会的責任だと重います。
    国や産地がつくった基準をいただいて伝達するだけで検証をしないのでは、だめでしょう。取引先や出荷者の抵抗に会うでしょうが、新市場建設を契機に、生産者・出荷者、消費者、卸・仲卸・買出人流通業者が意見を闘わせることから始めることが大事です。
(2)衛生・品質管理の確立と環境にやさしい市場づくり
  • 安全・衛生面で、いったん問題が起きたら取り返しがつかない、再起不能になる可能性があるから、市場内の物の流れのあらゆる段階において、レビュー可能なシステムを組み込む必要がある。安全性のある物を守るためには、何時、何処で、誰が、どのように扱ったかを追跡できるようなシステムを考えざるを得ないのではないか。
  • 水産の場合、産地でもHACCP型の産地市場でないと整備の名に値しないような雰囲気がある。例えば、魚を地面に並べるのはもうやめて、棚や台にしよう。日差しが入って風通しがいいなんて、ばかなことを言うのはよそう。ノーブラインドで窓もつけないで、365日クーラーをつけて取り引きしよう。長靴はやめようとか、売場の中にトイレがあるのはおかしい、などといった議論をしている。
  • コールド・チェーンを実現するための方策としては、駐車場での荷の積み降ろしは止めてしまおうというのがある。荷捌きは温度管理された建物の中で行い、産地からの入荷品の搬入や買出人の車への積み込みは、ドッグシェルターを介して行う方式で、食肉市場やオランダのアールスメール花市場などは、既に、そうなっている。
    駐車場での荷の積み降ろしは、いくら駐車場に屋根をかけても、結局は常温下に生鮮品をさらして運ぶことになる。
  • コールド・チェーンが、衛生・品質管理のために必要だというのは解るが、発泡容器に氷詰めにされている鮮魚を、ふたも開けないで右から左に動かすような場合まで、全館冷房が必要かとなると疑問が残る。
    もちろん、そのような物流の物でも夏場は、低温化が必要だとは思う。結局、品物によって衛生基準や温度管理のレベルは、分けて考えることになるのではないか。
  • 食品の衛生面での取扱基準は、これからどんどん厳しくなっていく。仲卸業者が店舗内でマグロを解体したり、3枚におろしたりする場合は、完全に外気と遮断した加工場の中で行う必要がでてくるだろう。
    そのときに、今まではかけていなかったコストが必要になる。できるだけ共同でやるという発想が必要だ。
  • 衛生・品質管理の確立には、コールド・チェーンだけでは駄目で、ISO9000番台とか14000番台は市場として取得するというような旗印を掲げて取り組むことが重要です。
    また、環境のことも考えれば、ガソリン車やディーゼル車は市場内を走らせないとか、廃棄物のリサイクルセンターをつくるといったことも必要です。

3.地域と都民に開かれた千客万来の市場づくり

  • 市場というのは、生産者や消費者、都民や地域住民の社会的合意(信頼や期待)の上に成り立っていて、その中身は時代とともに変わっていく。これからの市場は、取引と物流の場としての機能だけでなく、日本の食生活、食文化を伝え残す、新しい食の発見・創造の場を提供するために一翼を担うという役割を果たすことが重要だ。
  • 新市場づくりには、街づくりの視点も必要だ。ディズニーランドやディズニー・シーに行った帰りに新市場で食事をして行くとか、はとバスツアーの名所になるような食のテーマパークみたいなエリアをつくって欲しい。
  • 台所仕事を子供に手伝わせないから、調理の技術も伝承されないんです。今、魚を扱うのが気持ち悪いとか怖いという人が多い。新市場には、消費者が素材の捌き方や見分け方、多くの生鮮食材と出会える場を設けて欲しい。
  • 市場で魚教室をやると定員を超す応募がある。素材から作って楽しみたいという要望は潜在的にあるのに、それが女性の社会進出とか通勤難とかで阻まれている現実がある。だから、料理を教えるだけでなくて、家族や友達で「今日は市場で、魚を買って、料理をつくってワイワイやろう」という場所貸しがあってもいいかもしれない。
  • 関連事業者の魚河岸横丁は、市場業者と同じ場所で食べたり、買えるということで賑わっている。一般消費者に売る場、PRする場があれば良いというものではなく、市場業者と消費者が出会う演出が必要。市場ブランド商品のためのアンテナショップもあっていい。

4.その他のコンセプトの提案

  • 市場は生鮮食料品の供給を通じて都民の暮らしを支えると同時に、東京の産業も支えているという都の提言は、今まではあまりなかったけれど、自然な発想だと思う。新市場づくりのコンセプトとして、重要ではないか。
  • IT化が進めば情報システムを使ったいろんな取引も増えていくとは思う。しかし、多種多様な荷物が集まって、品質を評価できなければ市場とは言えない。
    そのためには、やはり、搬入から小分けまでがスムーズに流れるような物流の効率化は不可欠だ。搬入した物が、短い時間ですぐ搬出できるというのは、市場づくりのコンセプトとして、極めて重要。
  • 築地市場は中小の小売・飲食店の仕入れの場としては圧倒的な強さを持っているが、量販店や中小スーパーなど買出人の多様化に対応できないところに問題がある。
    したがって、多様な買出人の多様なニーズに応えられる総合力のある市場をつくることを新市場のコンセプトの基本に置くべきだと考える。
  • 水産の基本は、やはり生鮮だ。ベースになる生鮮の現物取引がしっかりしていれば、商物分離やインターネット取引などのバリエーションも展開でき、冷凍も加工も売り込んでいける。「生鮮が市場のコア・コンピダンス」というのは、重要なコンセプトだ。
  • ブランドというのは、時として、実力以上の力を人々に抱かせてしまうことがある。築地市場も、物流や衛生、品揃えや価格形成力などの機能で、実力以上に評価されているのではないか。
    だから、そういうブランド力にふさわしい機能を新市場では、持とうではないかというのが、新市場のコンセプトではないか。
  • 新市場で実現すべきものは、「物流のスピードアップ」「品質管理」「集荷機能の充実」だと思う。昔は、市場流通が独占していて、とにかく敵はいなかった。ところが、我々が社会の構造変化に対応できずに悶々としているうちに、市場外流通にノウハウをとられて、顧客を失って、産地も失ってという状況になっている。
    だから、市場流通を立て直そう、IT化などで一歩先んじている市場外流通のノウハウも取り入れて、時代をリードする市場をつくるという目標を掲げて、メリハリのあるコンセプトが欲しい。
  • これからの市場は、生産起点から、顧客第一主義への転換が必要。単に需給を調整して価格形成するだけではなく、食べ手と作り手に対応したマーケティング(価値創造)を実現する必要がある。この二つの基本の上に、食のテーマパークとか、市場として使われない時間帯の有効活用などのいろんなオプションを付けていって欲しい。
  • 小売店の側が機能別に多様化してきて、小売店ごとに違うニーズを持っている。単に効率的な市場をつくればいいということではなくて、物流も含めた品揃えというサービスを効率的に提供できるのかというふうに考える必要がある。
    豊洲に用意するのは、いろんなタイプの需要家に効率的な品揃えのサービスを提供できる体制をどう整えるかだ。
    そのときに、ジャスコのように品揃えは自分のセンターでやるというところには、商物分離で対応して、品揃えは卸や仲卸に任せるという需要家を相手にしていくかという、新市場のコンセプトをはっきりさせることが、必要ではないか。

Ⅱ 新市場で強化すべき機能についての提案

1.顧客にとって使いやすい市場とは?

(1)さらに多様化が進む顧客層
  • 築地市場は中小の小売・飲食店の仕入れの場としては圧倒的な強さを持っているが、量販店や中小スーパー、カテゴリーキラーなど買出人の多様化に対応できないところに問題がある。したがって、多様な買出人の多様なニーズに応えられるという意味で総合力のある市場をつくることを新市場の基本に置くべきだ。
  • 仲卸も量販店を排除してはやっていけないが、だからといって、豊洲は大規模流通みたいな形に集約していけばいいのかというと、それは違う。
    スーパーにも、生鮮の品質とか多様性へのこだわりがあって、現物を競ったり、ロットの小さい物にもきめ細かく対応していくことが、今後、重要になってくる。
    量販店にも対応するが細かい取引も大事にする、多様性のある市場づくりが重要だ。
  • 10年、15年先を考えると、人口の都心回帰が大きな流れとしてある。そのとき、郊外ではカルフールやウォルマート等の外資系ビジネス・モデルが席巻するのに対し、空洞化している都心に帰ってくる人々に食を供給するビジネスが、今後注目される。
    既に、西友系のスーパーが高級スーパーという業態で六本木にオープンしたし、倒産したマイカルのなかで都心型のポロロッカという業態に真っ先に買手が付くという動きが出ている。新市場は、今後、出てくる様々な業態に対応していくことを考えるべき。
  • 今後、高齢化社会への移行とか、郊外からの人口回帰で都市の定住人口が増えるという中で、身近に生鮮品、今晩のおかずを買える近隣商店街は必要だ。
    商店街の存続には、活力ある生鮮小売店の復活が必要だ。鮮魚店、青果店、精肉店、総菜店がそれぞれ複数あって競争している商店街ほど活気に溢れている。卸・仲卸は、一つの商店街に同一業種の生鮮小売を複数育てる視点を持って欲しい。
  • ダイエー、イオン、ヨーカ堂といった大手は別格で、市場はこういうクラスをメインの顧客と考える必要はないと思う。こういう人達とは、固定費を埋めるために付き合うのはいいだろうが、無理して商売しても利益がでる相手ではでないでしょう。
    しかし、市場業者が利益を出せて、相手の役にも立てる中堅のスーパー・飲食店というのがあるわけで、そういう人達を大事にしていくことが重要ではないか。市場と中堅の小売・飲食店がスクラムを組んで競争したら、食品分野では大手にも勝てる。
  • 築地の場合は、青果と水産で共通する顧客層を非常に多く持っていて、料理飲食店とかスーパーに幅広く対応できる品揃えが可能だ。
(2)仲卸・関連が一体となったキャッシュ・アンド・キャリーの提案
  • 顧客の立場から見ると、ひとつは、買出しにきたときに、野菜と魚が別々の部門としてあって買い回るというのがいいのかどうか、一緒に対面する売場があっていいじゃないかというのが考えられる。
  • 卸売市場は、ホールセール・クラブ(会員制卸問屋)の元祖と言っても良く、これまで、小さな小売店とか飲食店が買いに来る業務用仕入れのためのキャッシュ・アンド・キャリー機能でやってきた。しかし、買出人にとって買い回りしやすい本格的な店舗づくりにはなっていない。
    6万平米ぐらいのフロアに、水産、青果、関連の物販という総合的な品揃えドンと陳列してあって非常に選びやすい、といったものを考えて行く必要があるのではないか。
  • 築地でも、現実は、小売的な荷姿と分量で購入するのを許している仲卸さんもいらっしゃる。小口の顧客対応と大口の顧客対応というふうに、仲卸も機能分化が進んでいる。そうすると、いっそ思いきって、仲卸を中心に生鮮のキャッシュ・アンド・キャリーをつくって、関連商品の物品販売も加えてアメリカにあるような巨大専門店街として、消費者も受け入れるということも考えたらどうか。
(3)加工・仕分け・配送等のサービス機能の強化
  • 消費の多様化、買出人の多様化に対応するには、市場も生鮮素材を右から左に流すだけではなく、加工・仕分け・配送等のリテール・サポート機能を強化する必要がある。
  • 素材から食材への転換が進むというと、市場も加工機能を持たなければとの意見が出てくるが、すべてを持つ必要も無いし全部市場が抱え込むのは無理だ。市場は素材の提供が本筋ということもあり得る。
    ただ、市場は単に素材を提供するわけでは無く、素材の使い方、素材に合った加工の仕方も提供しますということは必要。
  • 今、冷蔵庫業者、物流業者、場外卸売業者などの手で、冷蔵庫、店舗別仕分け施設、切り身加工などの1次調理施設やパッケージセンターがくっついたような複合的な物流施設が増えていて、量販店のニーズに応えようとしている。
    こういう施設を見たときの市場業者の反応は、市場も同じものを持つ必要があるという反応と、基幹市場、拠点市場というのは、こういう外に諸々あるセンターに素材を提供するスーパーセンターであれば良いという反応に分かれる。
  • リパック、加工が流行だからと言って、これに対応する施設を市場内に取り込まなければというものではない。そういう機能は、産地の方でも出てくるし、場外業者のアウトソーシングもあって、一番効率の良い機能を提供できる人がやればいい話だ。
    基幹市場に必要なのは、中間流通基地としての加工・デリバリー機能であって、末端のスーパーが要求しているようなアウトソーシングを引き受ける必要はない。
  • 調理・加工機能をつけた方が買ってくれるとなると、そういう得意先を抱える卸・仲卸は、加工機能を持たざるを得ない。しかし、ウチはそれはやらないという卸・仲卸もいるだろう。市場内でやる人、市場外でやる人、また、仲卸店舗でやる場合も加工場を持つ場合もあるだろう。加工機能を誰が何処でどの程度持つかは、個々の市場業者の経営の問題である。

2.集散機能の強化(混載荷物の荷捌き機能強化についての議論)

  • 平成13年10月26日に夜間の水産物の移動実態調査によると、築地市場に搬入された3,030トンの水産物のうち、卸・仲卸を通じて買出人の手に渡った物が約2,000トン、夜中に積み替えられて市場から出ていった物は約1,000トンあった。
    この1,000トンは何かというと、千葉・横浜・足立・大田など築地市場の卸の系列市場あての荷が築地あての荷と混載で入ってくるため、築地を中継基地として使っている分と考えられる。
    この1,000トンは、集散拠点である以上、築地市場が担う必要のある物流量であり、豊洲の新市場でオペレーションする量に組み込む必要がある。
  • 転送品や通過物は、本来、市場の外で荷捌きすれば良いのだが、その場所が遠いとトラックの輸送距離が延びて効率が悪くなるので、やはり市場の中か近場がいいということになる。卸・仲卸向けの2200-2300トンと、そうでない1000トンが混載で運ばれてくる以上、市場としては受け入れるのもやむを得ないのではないか。
    その代わり、市場施設の使用料は払ってもらうし、何が、何処から何処へ行ったのかというデータは取る必要がある。
  • 転送とか配送などの物流部門は、卸売場と切り離した方がすっきりする。しかし、横持ちの経費が掛るので、そのコストをどこまで削減できるかという検討が必要だ。
    問題は、築地市場向けの荷と他市場向けの荷が混載されていて、トラックの真ん中と一番奥が築地向けだったりすると、やはり、何処かで全部降ろして、仕分けし直さないと卸売場にも並べられないと言う実態があって、コストとスペースが余分にかからざるを得ないことだ。

3.新市場の物流システムが目指すべき方向

(1)産地から買出人までの物流をトータルに最適化
  • 物流コストを下げるには、市場内だけではダメで、産地側、小売側を含めたシステムを作る地要がある。例えば、水産の産地でトラックに積むときに、卸あての荷物と他市場向けの荷物を市・場側でサッと取り出せるような積み込み方をするようなことまで含めて考える。
  • 市場流通の物流は、産地から卸売場までは出荷者の費用負担で行われ、卸売場から先は、卸が配達するケースが増えているとは言え、仲卸なり買出人の負担で運んでいる。それぞれのパート、パートでは最適な効率化であっても、トータルとして効率的であるとは限らないところが難しい。少なくとも、市場に荷が入ったときから出て行くまでをトータルなシステムとして、設計する必要がある。
  • ロットの大きい品物であれば全部が卸売場あても可能だが、水産の場合、生産者が大きくないため、あちこちの産地を回って少量多品目ずつ積み込む物が多い。産地に大きな集配センターをつくってそこで仕分けしてしまえば、新市場での物流はうんと少なくなる。これから漁協の合併が進むのを契機に、新市場の方から産地物流のシステム化を働きかけるぐらいのことをしたらどうか。
    北海道では、札幌市場の水産卸が無料で道内を集荷して回って、札幌へ全部集めて、東京向け、関西向けのトラックを仕立てていくような物流になってきている。東京の卸は、出荷者負担で送られてくる荷を受け取るという発想だけでいいのか。
  • 24時間対応型の市場を考える必要がある。平成15年から、トラックの90キロ規制が導入されると市場までの輸送時間が3割から5割余分にかかることになる。そうなると、今の競り時間には間に合わない。市場の取引時間に合わせろという発想では、取引は入荷の翌日になってしまう。入荷にあわせて24時間取引するということも必要ではないか。
(2)場内物流効率化の基本
  • 市場での荷捌きという観点からだけ考えると、平面が一番やりやすい。だけど、それでやると駐車場を荷役機械が走り回り、衛生管理、温度管理された流通ができなくなる。そうなると、ヨーロッパにあるような高床式の建物の中で、物流を完結させる方式も考えざるを得ないのではないか。
  • 築地の場内物流が、動線が輻輳して非効率な最大の理由は、フォーク、ターレーがところ構わず走り回るというところにある。新市場では、これらを整理する必要がある。その場合、駐車場での荷の積み降ろしはやめて、卸売場・仲卸売場の周りのプラットホームでだけ搬入・搬出するという物流に切り替えることが一番の解決策だ。
  • 水産では、取引時間がほぼ同じで、卸売場から一斉に仲卸売場へ集中的に運ぶから、動線がむちゃくちゃになる。これを解決するには、物流の共同化・一元化とか売場配列の見直しなども含めて検討する必要がある。
  • 卸売場にトラックをつけて、下ろして並べてしまうのがいちばん経費がかからない。
    しかし、産地から来る車がどんどん混載になっている。行き先も品物もバラバラで、中には、青果と水産、水産と花というのまである。こうなると、そのトラックを卸売場につけて捌くというのが不可能になる。
    混載で来る荷物をどう荷捌きするかというときに2つあると思う。卸用の荷捌き施設をつくって卸あての品物だけ取り出して出て行ってもらうというのと、共同の荷受センターをつくって卸あても他市場あても全部そこで仕分けてしまうやり方だ。
  • 現在の市場の物流機能は、集荷が中心で、出の部分が弱い。街の小売店の復活を支援するという意味でも、市場が小売店向けの配送機能を持つことが必要ではないか。その場合、細かい荷物の対応は茶屋をもっと強化して分担する、容器会社は水産のバーコード化に取り組むといった対応が求められるのではないか。
(3)新たな物流システム構築のための提案
  • 産地としては、なんでもいいから荷物を積みこんで築地に送りだしてしまうのが効率的だからそうしているけれど、築地の側では大変な物流処理が発生してしまっている。だから、混載でごちゃまぜに送られてきて、全部降ろして仕分けしない処理できない車のオペレーション代は10万円もらうが、きちんと積んであって3分の1の時間で処理できる車は1万円で結構というようなインセンティブも考えてもいいのではないか。
  • 仮に駐車場を荷捌きの場にしないことができたとしても、小売店への到着時間が何時だから、それまで待っていようとか、駐車場が倉庫代わりに使われてしまうということも起こりうる。これを無理やり追い出したりすると、市場や先方の周辺で路上駐車が発生しかねないことにもなる。出荷車輌や配送車輌の待機システムも考える必要がある。
  • 生産者の費用で持ってきてもらって、小売業者や飲食店に取りに来てもらうということを前提としていたら、市場にはコスト削減圧力が働かず、市場外との競争に勝てないのではないか。
  • 小売店の側が機能別に多様化してきて、小売店ごとに違うニーズを持っている。単に物流を効率化すればいいということではなくて、物流も含めた品揃えというサービスを効率的に提供できるのかというふうに考える必要がある。豊洲に用意するのは、需要家のタイプをはっきり区分して、それぞれに必要な物流サービスを提供できる体制をどう整えるかではないか。

4.新市場の部門構成のあり方に関する議論

(1)水産・青果の業種別構成から機能別構成へ
  • 今後は、多機能な卸売市場が評価されるだろう。生鮮食料品は生産の変動制が大きいし、不定形だし、季節性があり、そういうものに対する消費者のニーズはむしろたかまるだろう。だから、これまでの現物を見て取引する従来型営業部門は必要だが、物流センターとしての機能、また海外との関係でいくと輸出入の窓口機能など、多様な機能を持たないと水産物の基幹市場とは言えないのではないか。
  • スペインでは、スーパーの本格的な展開はこれからで、小売の中心は中小専業店だ。マドリ-ド市場は、中小小売店向け市場として賑わっているが、スーパーと競争できるように差別化を図って、街の魚屋、八百屋を育てようと市場業者が一生懸命やっている。
    けれども、将来のことを考えて、スーパー用のセンターとキャッシュ・アンド・キャリーの2つの部門にも投資しようとしている。
  • ランジス市場は、パリ近郊の小売商が減少して、10年ぐらい前に売上げがどんどん減っていった。また、ヨーロッパ統合によって通関手続きが不要となり、ランジスに一旦物を集めなくても、大陸内で自由に輸送ができるようになった。そこで、ランジスはスーパーのセンター機能を市場内に取り込んで、減った分を盛り返している。
    去年、視察に行ったが、これまでの集散拠点プラス中小小売商向け市場というコンセプトを変えて、従来型の中小小売向けの現物取引部門、スーパーの物流センター部門、在庫機能と加工サービス機能を強化してインターネットでいつでも注文に応じて納入する部門の3本柱にするとのことだった。
  • 新市場が目指すのは、物流の効率化と取引環境の整備であり、集荷、分荷を軸にしたハブ市場としての機能の充実だ。将来の流通の変化を考えれば、市場を機能別に分けて、①従来型の小口取引・物流部門、②量販部門、③輸出入機構、④消費者対応部門の4つに再編成し直す必要がある。
(2)千客万来ゾーンのつくり方
  • 実のところ、中間流通業者は、生産者のことも消費者のこともあまり知らないのではないか。市場も含めて、中間流通業者が今、一番やらなければならないのは、とにかくお客様である消費者のことを知ることではないでしょうか。営業センスを磨くためにも、消費者と触れ合える場を、市場につくることは重要だ。
  • 千客万来部門は、市場見学とかエクスカーションとか、消費者の学習施設だけでは、賑わいにならないのではないか。
    世界の食とか世界の卸売市場が見えるようなエキジビション機能、あるいは産地の商品開発やブランド育成の努力が小売業者や消費者に伝えられるアンテナショップ的な機能を持った直販を考えると良い。単に消費者に物を売れば良いと言うのでは、失敗する。
  • 卸・仲卸売場は素人さんお断りにして、千客万来ゾーンという消費者や見学者向けのショッピングセンターをつくるのか、仲卸売場自体を消費者にも開放するのかで、市場のつくりかたが大きく変わる。
  • 仲卸が消費者に売ることについては、水産仲卸でも意見は分かれている。魚食の普及という意味で、市場が情報発信したりディスプレイして見せることは必要だが、それと仲卸売場で消費者に売るということとは別だという意見と、仲卸売場で消費者が買えるようにすることが、消費者に市場を理解してもらえることだという意見に分かれている。
    実際、小口のお客を相手に商売している仲卸だと、1軒のお客さんが買う量ってそんなに多くないので、消費者が来ても対応としては同じになる。仲卸売場で消費者に売るのがいいのか、別の場所を設けるのがいいのかは、十分議論した方がいい。
  • 消費者お断りの場所と消費者専用の場所に分けるのは良くない。消費者、見学者専用だったら、その辺のショッピングセンターと同じだ。
    販売単位、ロットで区切ればいい。業務筋も消費者も区別しない代わりに、切り身では売らない、箱売りなら消費者も買えるというのが、ホールセール・クラブなんかもそうだ。出来るだけ多く集客するには、そういう工夫が必要だ。
  • もうひとつは、場内と場外の連動性を考えてみる。小売・食文化部門だけでなく、従来、市場内になかった配送センターとか、輸出入部門といったものを市場の隣に集めて、トータルで流通させる。40ヘクタールの中だけれども、この部門は市場流通でなくてもいいとなる。

5.グローバル流通に対応する市場のあり方についての意見

  • 今、550億ドルと言われる世界の水産物マーケットの3割は日本が占めている。世界中で魚を食べはじめていると言っても、キー・ステーションとしての日本の役割が、そう簡単になくなるわけではないし、むしろ積極的に維持することを考えるべきだ。
  • 新市場を水産物の世界的なマーケットのキー・ステーションと位置づけるのなら、卸も仲卸も、地球の裏側まで行って商売してくるということを考える必要がある。
    輸入物や養殖物では、出荷段階で規格や品質が揃えられているが、そうでないものも多い。市場が主体的に海外に対して、定番ではないものを積極的に引っ張ってくるという機能が、流通のグローバル化時代には求められてくる。
  • 海外へ行くと、アラスカも、ノルウェーも、東南アジアも築地の相場を見ている。
    中国に漁業の中心が移ってしまい、築地が持っている情報の価値が広州とか上海とか大連に移ってしまうかもしれないときに、築地が持っている集散機能、グローバルな拠点機能というものを失くさないようにするというような発想で、新市場を考えるべきだ。
  • 新市場が、グローバル化する流通の中でハブ的な機能を持つときの考え方の一つは、豊洲の面積を前提としたときに、ハブ機能の中のどの機能を持つのかと考える必要がある。全てのハブ機能を持った市場にするというのは、おかしいし、無理がある。
  • ハブ市場というのは、水産の基幹市場としての機能を中心にした考えだ。新市場を議論するときに重要なことは、水産と青果のあり方や住み分けをどうするかということだ。

6.新市場に求められる情報機能

  • 200海里体制に移って、唯一残された沿岸漁業を維持するために、水産の産地では、何時、どれくらい、どのサイズの魚が水揚げされていて、何処に出荷されるのかという情報を見て、出荷先を選ぼうという努力をしている。
    例えば、アジでも、たたき用、刺身用、焼き魚がいい物と色々ある中で、入荷した現物を見て値段を付けて、「沼津から10トンぐらい入荷して、今日のアジは安い。」程度の情報を流しているだけでは、基幹市場の条件は満たせない。
    何千という漁業者から水揚げ情報を集めて、売り手と買い手の必要な情報に仕立て上げることをトータルでやらないと、建値市場とは言えない。
  • 仲卸の立場で言うと、20年前だと競りで自分が欲しいものを自分の欲しい値段で買えた。どういう品物がどれだけあって、それをどれだけ欲しいかが明確にできた。現在は、どれだけの物が入っていて、その中で自分がどれだけの物を買えるのかも明確になっていない。そういう情報がきちっと取れないまま、価格を決められるだろうか。
  • 青果では、取引が相対になってから入荷数量が正確に把握できなくなっている。どんな物がどれだけ入っているのかは、目で見ても解らなくなっている。だから、現物を見て判断するというこれまでのアナログ思考から、卸の集荷・入荷や、産地の生産状況などの情報をネットワーク化して、それを見ながら取引していくデジタル思考への転換が必要な時代になっている。
  • 物流の効率化を進めるためにも市場の情報化は必要だ。産地から市場の卸・仲卸を経て買出人までの物流を追跡可能なものにして、どの荷物が今、何処にあるのかを把握出来れば、配達違いや取引チャンスを逃がすなどのロスを少なくできる。また、輸送業者の送り状作成から、荷の受け渡しの確認、荷捌き・配達料の請求、集金などの一連の仕事はオンライン化しないと、ますます進む物流の小口化に対応できない。新市場では、生鮮EDIの導入は不可欠だ。

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