この仕事は子どもの頃からの夢だった。魚のおいしさを伝え続けてきた職人の店。
時代や顧客のニーズに合わせ営業手法も臨機応変に
最寄り駅は都電荒川線の滝野川一丁目。首都高中央環状線が流れる明治通りに「銀河鉄道999」のキャラクターが描かれたアーチが建っている。馬場商店街の入り口だ。そのほど近くに「魚長」は昭和47年から店舗を構えている。
「15のときから魚屋になると決めていた」と店主・中澤茂さん。「この商売を始めた当時は、周りと同じものを置いていたんです。でも、あるときスーパーのチラシで負けた。じゃあどうしたらいいかと考えて、近所では扱っていないものを置こうと決めたんです」
具体的には冷凍物をやめて生のおいしさを届けることにした。店先で旬の出物を知らせる手書きのPOPも22年前から続けている。また、時代の移り変わりとともに近隣のマンションでは電化が進み、サンマが焼けないというお客さんのために焼き物も始めた。一人暮らしや足が不自由なご老人には宅配もしている。
「おばあちゃん連中が喜ぶんだもん」
そう語る中澤さんもうれしそうに顔をほころばせていた。

約40年続くお店構えは
歴史を感じさせる
間違いのない品物が集まる市場と長い付き合いの仲卸さんのおかげ
馬場商店街の会長を務める中澤さんは、昨年の暮れ、「うっぴー祭」というイベントでマグロの解体ショーを行った。店先には多くの見物客が押し寄せ、大変な盛り上がりを見せたという。
イベントの準備を始めたのは8月のこと。生にこだわる中澤さんは、このマグロの仕入れにもこだわった。予算や漁の状況が読めないことなど問題は山積していたが、ショーが実現できたのは年十年と付き合いのある仲卸さんのおかげと話す。
「市場、特に全国各地から品物が集まる築地市場は日本一だと思います。産地もはっきりしてるから安心できますしね。あそこに集まったものは間違いない」
より確かな品物を求めるマインドが互いを刺激し合って築き上げられた信頼関係なのかもしれない。

大盛況のマグロの解体ショー
売っているのは信用 だから特売品は置かない
馬場商店街では毎月7日、17日、27日を特売日と定めているが、この特売にも中澤さんには信念がある。
「特売日に特売品を売るのは特売じゃない。いつも売っているものをこの日だけ安く売るんです」
なじみのお客さんは同店で扱っている魚介類を信用して買っている。だから、特売日に合わせて質を落としたり、産地の異なるものを仕入れたりはしていないという。
「魚を売ってるというより、信用を売ってるんだよね」 この街に根を下ろし、この街の人々に魚のおいしさを伝え続けてきたベテランの言葉である。また、職人らしいこんなお話も聞かせてくださった。
「包丁をキレイに研いでやると、包丁が喜んでいるような気がするの。その包丁で塩辛用のイカを切るでしょ、キュッキュッて音がするんです」
中澤さんの包丁さばきにイカも喜んでいるということだろうか。
「好きでなった魚屋だから、やってて楽しいですよ。生まれ変わったらまた魚屋をやりたい」
いきいきとした表情でそう語る中澤さんがとてもまぶしく見えた。

築地で仕入れた食材には
産地の記入も忘れない

信用を売っているんだと話す
ご主人の笑顔はまぶしい
◆データ
滝野川 魚長 〒114-0023 東京都北区滝野川2-11-11
TEL:03-3915-5323
営業時間:10:30〜21:00
休業日:日(7のつく日は営業)
